2012/05/30

合羽橋の新しいカフェ

大人の雰囲気。平日は比較的静かです
仕事帰りに時間ができたので、
数ヶ月ぶりに合羽橋へ。


以前浅草に住んでいたので、
合羽橋はその頃から気分転換によく歩く散歩コース。
浅草から引っ越した今でも、
比較的近所なので、日常の乾物系食材を調達することもあります。


考えるばかりで頭でっかちになってしまった時や、
思考がぐるぐるしてしまったときなど、
食まわりのいろんなものを片っ端から見て歩き回ると、
頭の中を新鮮な空気が通り抜ける感じがします。


目当ての店をいくつか訪ねたら、
大抵はここのコーヒーで締める。
「合羽橋珈琲」です。
窓辺の植栽越しに外を眺められる禁煙席が特等席。
合羽橋の中では突出したおしゃれな雰囲気なので、
初めて入る人は「こんなところにおしゃれカフェが!」
とびっくりします。


天井が高く、インテリアは木を生かした温かみがあり、かつシンプル。
大人の憩いの場という感じがして居心地良いです。




むむっ!合羽橋らしからぬ雰囲気
今回も食器屋、道具屋などを見て回ったあとに、
ひと息入れようと合羽橋珈琲を目指したのですが、
その途中、合羽橋らしからぬスタイリッシュな
新しいカフェを発見!


「Bridge(ブリッジ)」
4月にオープンしたそうです。


代々木上原の「Little Nap COFFEE STAND」
プロデュースしたお店だそう。
なーるほど、このおしゃれ感。




たっぷりの空間が、ほっとなごみます












「Sturdy Styleという一級建築事務所が奥にあり、
手前スペースがカフェ。
エントランス部分が飲食店という事務所スタイルは、
人を呼び込むことが大切な業種には
とってもプラスに働くのだろうと想像できます。


トイレのある2階から見下ろすと
左の写真のような感じ、

天井の抜けた感じがとっても落ち着きます。


表参道?目黒?青山?
No! Here is 合羽橋!
メニューは代々木上原のお店同様、
アイスクリームとコーヒー。
豆もマシーンもこだわっていて、
お値段は400円前後。
いいですねー。


ちなみに店内ならマグで、
持ち帰りはカップに入れてくれます。


合羽橋の散歩に、新たな楽しみが増えました!

2012/05/25

ポルトガルの血のスープ

パッパス(シュ)・デ・サラブーリョ。
ヴィアナ・ド・カステロで飲んだおしゃれバージョン。
お店のポルトガル人も「このスープは濃いわよ!」
と忠告してくれました
ポルトガルに「血のスープ」ってあるって聞いたんだけど、
おいしいの? という質問を
フェイスブック上でいただきました。


はい、あります!
血のスープどころか血のデザートまであります!
せっかくだから、簡単にご紹介したいと思います。


血のスープは北から南まであります。
私が実際に飲んだのは、
左の写真の「Papas de sarrabulho(パッパス・デ・サラブーリョ)」。
北のヴィアナ・ド・カステロという町と、
アマーレスという村のレストランで飲みました(次の写真)。
豚の肝臓、肺、耳、のど、腰肉などなどに、もちろんたっぷりの血、
それに鶏肉少々と小麦粉を適宜加え、
クミンをたっぷり効かせて
ドロドロになるまで煮込んだスープ。


ご想像通り、非常に、大変、ものすごく濃厚です。
でも、濃厚ですがスパイスを加えじっくり煮込んであるので
決してクセのある強い味ではなく、
むしろコクのある柔らかい味に仕上がっていました。
いや、柔らかいは言いすぎですね。
血が入っているので、それなりに野性味はあります。


あれ、でもこの写真だと、どうもそのワイルド感が伝わりませんねー。


写真を撮ったこのお店、
ポルトガルでは結構センスのある今どきっぽいレストランだったので、
少しだけ飲んでみたいとお願いしたら、ものすごく少なめポーションにして出してくれたんです。
こんなこと、ポルトガルでは滅多にありません。


ごく一般の田舎の(いや、都会でもありますね)レストランで頼むと、
洗面器になみなみ注がれた黒っぽいアズキのスープ、
みたいなビジュアルで出てきます。
あ、写真がありました。こんな感じですね。


アマーレスで飲んだパッパス・デ・サラブーリョ。
この器の直径は20㎝以上ありました。
上に散らされたのは、欠かせないクミン
だから、知らないで頼んだ人はたまったもんじゃない。
こんな大量の煮込みスープ、どうするんだ!という感じ。


みなさん、
もしもポルトガルで料理をオーダーするときは、
くれぐれも「メイアドーズ、ポルファボール(半人前でお願いします)」の一言を忘れないで下さいね。


量の話にそれちゃったので、味の話に戻ります。


パッパスは、見た目と味のギャップがかなりあります。
どれだけ血なまぐさいのかと
恐れながらひと口飲んでみると、
「ほほー、これはいいお味ですねー」と、
その辺の誰かに言いたくなる感じです。
豚肉をよく食べる国ならではの、
血までもおいしくいただく
知恵が詰まったスープだと思います。


で、南の方に行くと、やはり似たスープがあります。
今回血のスープについての質問が
Rechinaという名前のスープを知っていますか?おいしいですか?
ということだったんですが、この名前のスープ、残念ながら私はまだ飲んでいません。


でも、手元にあるポルトガルの郷土料理事典のような「Cozinha Tradicional Portuguesa」
という本によると、
南のアレンテージョ地方では、Rexina(Rechina)またはCachola、あるいはMoleja
という呼び方もするそうです。


これまたレシピを見ると、豚の内臓と血が主。
それに加え、コショウ、パプリカ、クローブ、ビネガーなどの香辛料を加えて煮込んだスープ。
おいしそうですね、次回ぜひ飲んでみたいなあ。


南では、オレンジのスライスと一緒に出されるそうです。
肉とオレンジの組み合わせは、ポルトガルではお馴染。
日本の、魚+かぼすorすだちの方程式と似たものだと思います。


それと、血のデザートというのは、これ。
見た感じはチョコレートプディング。
でも、食べると小豆蒸しようかん。
実際は豚の血と砂糖などで作ったお菓子
パッパシュ・ドーセシュ・デ・ポルコ、
主観による訳ですが、
豚の血入り蒸しようかん風菓子
みたいなお菓子です。


中部コインブラに近い村に住む、
郷土料理研究家のおじいさまの家で
ホームパーティーに参加した時に出会いました。


言われなければ血が入っているなんてわからないので、私はてっきり
「ポルトガルでも小豆のお菓子があるんだ!」なんて勘違いしながら食べていたら、
周囲のおじさまのお友達から一斉に、
「それは豚の血が入ってるのよ!」と
ニコニコしながら言われてびっくりしたお菓子です。


西洋風に言えばプディングなんでしょうけれど、私の感想は、ずばりこれは蒸しようかんに近い。


ほかにも、ポルトガルには鰻と鰻の血、米を煮込んだもの、鶏と鶏の血、米を煮込んだものなど
血を使った料理がたくさん上がります。
もちろん、食べましたよ。でも、書いてるときりがないかも…。


ということで、ひとまずポルトガルの血のスープ&血のお菓子のお話でした。


ああ、書いていたら赤ワインが飲みたくなってきた!


2012/05/24

ボロボロです!

いい味出てます。自画自賛の極みです
代々木にあるポルトガル料理店
「クリスチアノ」の佐藤シェフと、
月に数回、仕事の打ち合わせでお会いします。


佐藤シェフがお店を開く前から
私の書いたポルトガルの本を読んでくれていたのは
本人からも伺っていました。


が、今日何気なく、佐藤さんが机の上に置いた
その本を見て…感激!


もう、本体はボロボロです!
ページはフセンだらけです!
カバー、思いっきり破れてます!
全体にクタクタです!


あああ、本当に嬉しかった。
ありがたやありがたや。
思わず写真に撮りました。


「だから何度も読んだって言ったじゃないですか!」と
写真を撮って騒いでいる私に佐藤さんは突っ込みましたが、
やっぱり現物を見ると違うんですよ!
しみじみ、拝みたくなりました(何を?)。


産業編集センターの松本さん、これ見て!
愛されてますよ、ポル本!


日々、雑誌や書籍で記事や文章を書いていますが、
目の前で自分のページを読まれた経験はありません
(校了前に編集長やデスクに穴があくほどじっくり点検されたことは
数えきれないほどありますが…)。


「あれ、面白かったよ」と友人に言われても、
嬉しいけれど、なかなか実感が湧かないものです。


ああ、幸せです。佐藤さん、読み込んでくれてありがとう!


また、ボロボロになるまで読んでもらえる本を書かなきゃ!


2012/05/23

0歳児育児時代からの支え「定本 育児の百科」


いまでもときどき開いています

私は38歳での出産でした。
で、類は友を呼ぶなのか、
周囲には40歳前後の同世代のプレママたち(妊婦を最近こんな風に呼びます)が何人もいます。

だからプレママたちには
「いろいろ教えて」とよく言われます。
で、便利なグッズの話をしたり、
おしゃれな妊婦用の輸入服やベビー服の話をしたり、
親切なリース屋の話をしたり。


でも、本当に話したいのは
そういうことだけじゃないんですね。
一番伝えたいのは、
出産後すぐの0歳児育児は大変だから覚悟してね、
ということです。


しかしそれは私個人の経験で、子育ては個々に違うもの。
実際、0歳児でもそんなに大変じゃない人もいるらしい
(まだそういう人にお会いしたことはないけど)。
だから、ナーバスな時期に余計な心配をさせるのはそれこそ余計なお世話だと思い、
ついこの話題を後回しにしてしまいます。


例えば、景色も気候も食べ物も素晴らしい、
誰が行っても同じように感動できる旅先を案内するなら、
気持ちも晴れやかです。


でも、波乱含みの旅先に向かう人への案内って、はてどうすれば。


いや、やっぱり伝えたい。
プレママたちよ、躊躇を捨て、あえて書きます。
出産直後から数ヶ月の育児は、正直に言って意識がぶっとぶほど大変です。
だから、どうか覚悟して下さい。
パパが積極的に手伝ってくれる環境だとしても、
おっぱいがあるのはお母さん。
だから母親である自分が頑張って乗り越えるしかない。


もちろん、生まれたてのおチビはかわいいものです。
でも、それだけで0歳児育児の苦しみからは逃れられません。
対象は深く愛せますが、
その環境や状況は別。気が遠くなるほど過酷でした。


夜はほぼ一時間ごとに泣き叫び、すやすやなんて寝てはくれません。
自分の意識が寝てるのか起きてるのか朦朧としている中、
赤ちゃんが何を要求しているかなんて、読めるはずもなく、
ただただあやして、おっぱいを飲ませ、あやし続ける。
どんなに難しいクライアントにつきあうより、ヘビーです。
自分は壊れるんじゃないかと思う瞬間が私は何度も。

すやすや眠り、起きるとニコニコしていつも静かなんて、
そんなの幻想に等しい。
ギャンギャン泣いて、1日に十数回もおむつを替えて、
せっかく飲んだおっぱいやミルクも実によく吐き、また泣き叫ぶ。
怖いぐらい母親を疲弊させるのが新生児です。


でも、なんとかやっていけます。シングルの私でも、なんとかやってこれました。
キツイけど、永遠には続かない。今だけの修行みたいなもので必ず終わりがあります。
だから、今まさに0歳児育児で不眠不休の人は、
どうか頑張って欲しい!


そして、周囲の人は必死で頑張っている彼女を、
最大限支えてあげて欲しいです。
あんなに小さい存在でありながら、0歳児は暴君です。
育児は24時間の重労働。女性にとって苛烈を極める時期なのです。


このキツイ数ヶ月を超えると、育児は俄然楽しくなってきます。
女性としての自分自身も徐々に取り戻せます。
気になる体重や体型だって、ゆっくりと戻ります(多少の自意識が必要ですが)。
だからぜひ、0歳児のお母さんたちには頑張って欲しい!


あれ、プレママ向けの話だったのに0歳児ママ対象になっちゃっいました…。


で、話がとても長くなりましたが、
プレママや、0歳時育児に挑んでいる人に
お勧めしたい本があります。


松田道雄先生が書かれた育児の名著「育児の百科」
(岩波文庫・2007年に上中下3冊の文庫になりました)。
これ、1967年から版を重ね、常に改訂版が出されていた育児書の大ベストセラーで、
0歳児から6歳児までの親へのアドヴァイスが載っています
(松田先生の意向により、先生が98年に他界された後は、医学の進歩で変わりやすい
新薬の名前や病気の死亡率だけは外されています)。


0歳児育児のつらい経験の中で見た希望の光、それがこの本でした。


松田先生は、医学者であると共にロシア革命研究者、市民運動家でもあり、
広い分野で活躍された知識人であり文化人だった方。
綴られる文章は、育児書だけではもったいないぐらい人生の示唆に富み、温かいんです


子育てに揺れる親の心に常に寄り添い、激励の姿勢を崩しません。
働く母の憂いにも、優しく語りかけてくれます。
しかも、断定的な物言いは決してなく「あせらなくても大丈夫」という指摘が随所に見られます。
各ページには、まるで病室での医師と親とのやりとりを再現するかのような具体的描写も多く、
多くの親が誤って思いこんでしまいがちな細々としたつまずきにも、
前向きで現実的かつ丁寧な解決案を出してくれています。
アマゾンのレビューを覗いてみても、やっぱり感動の声がたくさん。
特にこの本、父親が読んでも感銘を受けることが多いようで、
男性のレビューもかなりあります。


これは私にとって、もはや育児書というよりも、育児を通した人生の哲学書のような存在です
(もちろん、育児書の内容ですが)。
私はその細やかな配慮にあふれた文面に、たびたび感動していました。
とくに、中巻の11ヶ月から満1歳までの章の「お誕生日ばんざい」にある一説は、
子どもを育てる人だけでなく、すべての大人にあてはまるメッセージがあります。


~人間は自分の生命を生きるのだ。いきいきと、楽しくいきるのだ。~
~赤ちゃんとともに生きる母親が、その全生命をつねに新鮮に、
つねに楽しく生きることが、赤ちゃんのまわりをつねに明るくする。~


全生命をつねに新鮮に、つねに楽しく生きる。
なんて希望に満ちた、人間を応援するシンプルな言葉なんだろう。
松田先生の人間をみつめる目の優しさ。
もし先生がご健在だったなら、ぜひインタビューをしてみたかった。
いったい、どんな方だったんだろう。


そしてこの章の最後の1節は、ダンテの有名な言葉を引用しています。
日々容体が変わりやすい0歳児を不安や恐れを抱きながら育てている親に、
誰より子どもをよく見ているはずの自分に自信を持ちなさい、と勇気づけているのですが、
私にとってこの言葉は、今も生きる上で心の杖のような役割を持っています。


~長い間かけて自分流に成功しているのを、初対面の医者に何がわかる。
「なんじはなんじの道をすすめ。人びとをしていうにまかせよ」(ダンテ)~


ああ、抜粋ではちっとも感動が伝わらないんですよね…。
私の伝え方が中途半端なせいでもあります。


まあそれはともかく。


この本を読むと、私は育児に限らず、よーし人生を頑張ろうとエンジンがかかります。
ですからプレママと0歳児育児を実践中のみなさん、せひ読んでみてください。
1歳児以降(中、下の2巻)からでも、もちろん親には役立つ内容です。


2012/05/15

珍しいポルトガルのチーズ&ヴィンテージポート

梶田さんが持ち帰ったポルトガル直送チーズ5種。
ソムリエ馬場さんおすすめのヴィンテージポートも一緒に
先週末、ポルトガルのチーズとポートワインを味わう会がありました。
場所は目黒にある梶田泉さん主宰のチーズ教室
http://www.cheese-school.jp/


ポルトガルでチーズを巡る旅をされてきたばかりの梶田さん、
旅のお供に私のポルトガルの本を読んで下さっていて、
それが縁でお知り合いに。
チーズを食べる会にも参加したというわけです。


ポルトガルのチーズ、
日本ではかなーりマイナーです。
なんたって輸入数が少ないんですよね、
チーズ専門店でもほとんどみかけません。
だから滅多に食べられない。

そもそもポルトガルは直行便がないので
輸送も手間がかかるし、
商品管理もポル流でざっくりしていることが多々あって
商売としてはギャンブル要素が多く、なかなか難しいそう。



これ、チーズだけに限らず、ワインでも小物でも全般に言えるようです。
ポルトガルの商品を扱う輸入業者さんは、
みなさん必ず「もう、本当に大変なんです」とおっしゃいます。


ポルトガルのざっくり感覚、よくわかります。
私も南部北部を問わず、約束の時間から半日待ちぼうけたり、たびたびありました…。
日常生活でのざっくりなら、ま、いっかでも、商売となるときっと大変でしょう。

で、チーズとポートの話に戻って。


直径20㎝ぐらい。どっしりボディは
包帯でぐるぐる巻きです。
やわらかいチーズだから、
こうやって布を巻いて成型します


 会で食べたチーズは5種類。


 なかでもポルチーズで最高峰と言われる
 セーラ・デ・エストレーラ
 (star mountain range=星山脈)
 という名のチーズが盛り上がりました。
 産地がそのまま名前になっていて、
 ポルトガル人にとってもこのチーズは別格。
 氷見のブリとか、大間のマグロとか、明石のフグとか、
 そんな感じかな、いやちょっと違うか。
 いずれにしても、このチーズの名を耳にすると
 「おほっ」と顔がほころぶ感じです。


 上の部分をふたのようにカットして、
 液状化している中身を食べます。
 フランスのモン・ドールのように、
 スプーンですくって食べるしかない。
 だってトロトロなんです。






セーラ・デ・エストレーラ。トロットロです
こんな感じ。
とろけちゃってます! 
これ、スライスパンにつけてもいいんだけど、
おすすめの食べ方はパォン・デ・ロー、
つまりカステラにつける食べ方。  
甘いとしょっぱいを一緒に味わえて、止まりません。


ポルトガルのパォン・デ・ローは、
スペインのビスコチョ同様、
日本のカステラの原型と言われています。
ただ、現地のパォン・デ・ローは、
日本のカステラよりさらに卵の風味が強くて
素朴な食感のものが多い。
だから、クリーミーなチーズによく合います。
ここにポートワインを合わせると、
いかにも大人のデザート。





冷水をかけるとピキッっと割れる音がします。
飲めるよー、という合図に聞こえます

さらにこの日は、
ヴィンテージポートの開栓もありました。

開けているのは、
ソムリエの馬場祐治さん。
98年のポートワイン・ソムリエコンテストで
優勝されたこともある方で、
ポートなら馬場さんと、業界で有名な方です。

私は馬場さんの名前を聞くと
親近感が湧いてしまいます。
というのも、私が「馬田」という珍しい名前で、
小さい頃からよく「馬場」さんと間違われたから。
だから、初対面でも仲間みたいに思えちゃう。
あ、あなたは馬場さん!私は馬田です!みたいな。
まあ、ものすごく一方的で迷惑な話ですが…。

話をポートに戻して。
飲んだのはバロス1983年。
80年代ではかなりできの良い年だそう。



そもそもヴィンテージポートは毎年仕込めるわけじゃない。
非常に出来の良いブドウができた年に限られ、せいぜい10年に2~3回と希少。
これなら大丈夫、ヴィンテージポートに仕込めるぞというブドウができた年は、
ヴィンテージ宣言がなされるくらいですから。

で、希少だと当然値段も高くなります。

でも、愛好家の中には、そこまで高いのは普段から飲めないよ! 
という声が多かったそうで(そうだそうだ!)、
カジュアルにヴィンテージを楽しむために開発されたのが
LBV(Late Bottled Vintage)、レイト・ボトルド・ヴィンテージ。
ちゃんと熟成感もあるから、これ、お買い得。
ヴィンテージ宣言するほど完璧じゃないけど、これもかなりいけるよね、という
上出来なブドウを使って作るという決まりがあり、
4~6年樽熟した後、ろ過・瓶詰めして出荷されます。

つまり澱が入っていないので、開けてすぐ飲めます。
LBVとフォンダンショコラの組み合わせ、私はポルトガルでかなりはまりました。
ただし、ただでさえ甘+甘コンビですから、
フォンダンショコラの甘さはできるだけ控えめがいい。
カカオの香りと相性がいいようです。


話がややそれたので、ヴィンテージの話に戻ります。

「料理王国」06年8月号より。
この時開けたのはテイラー85年のヴィンテージ
ポートワインが好きな方はご存知かと思いますが、
ポートのヴィンテージは開栓が独特。
数十年瓶内熟成させているためコルクがボロボロになっている可能性があるので、
瓶の首ごと切って開けるんです。
以前、雑誌「料理王国」でテイラー社を取材したときに開栓についても紹介したので、
部分的に見せつつちょっと説明すると…。

1.テナスという、首部分を掴む器具をバーナーで熱する(かなりじっくり熱します)。
2.ボトルの首部分をテナスで掴み、熱を加える(この加減がプロならでは)。
3.熱した部分に冷水をかけ、割る(ひとつ前の写真で馬場さんがされている作業がここ)。
4.コルクごと割れた部分を外す。
5.デカンタして瓶内にたまっている澱を取り除く(澱、たっぷり)。




同じく「料理王国」06年8月号。
ドウロ上流のブドウ畑や、
テイラー社のワイナリーの様子も
取材しました
テイラー社での撮影は、
デモンストレーションに使用した部屋の
ターコイズブルーの壁がポートワインをより美しく見せ、
とても印象的でした。

また、ここはオープンテラスがあって、
レストランもあります。

左のページまん中がそのテラスや中庭の景色。
高台からドウロ川を眺める絶好のロケーションなので、
ウェディングパーティも開かれるのよ、と、
広報のアナさんも嬉しそうに話していました。

ポートワインがお好きな方がポルトガルに行く際は、
まず、テイラー社をはじめ
50以上のシッパー(ポートワインメーカー)が
ひしめくドウロ川沿いのヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアという
地域を訪ねていろいろなポートを味わい、
時間があればドウロ川を上って
ぶどう畑を見学にいくのがおすすめです。
電車で上流の町まで旅するのも気持ちが良いですよ。




ああ、私もまたポルトガルを感じる旅をしたい!
ポルトガルのチーズやワインを楽しんだら、いやでもますます気持ちが盛り上がります。
3歳児を連れてあちこち取材できるのかどうか、
それとも、取材はあきらめて自分のオフとして娘と旅するべきか。
もしくは、娘を親に託してガンガン取材旅行するか。
はあ、悩ましいなあ…。





2012/05/10

LEE6月号発売中です

仲間由紀恵さんのツヤ髪!
ロングもいいなー、としみじみ

発売中のLEE6月号料理企画で、
文章を担当しました。
タイトルは「ありがとう 豚こま」。
文字通り、豚こまの食材としてのありがたさを
再認識できるレシピがいっぱいのページです。


豚の各部位を一定の形にカットした際に出てくる
半端な形のこま切れ肉が集まった豚こまは、
お店によってパックされる部位はまちまちですが、
肩やモモがミックスされているから
なかなか良い味がでます。
しかも安い(これ、大事)。
ただ、豚こまって、
なんとなーく炒めている人が多いようです。




この企画では、そのなんとなく同じで飽きちゃうなあ、
というところから脱却するべく、
アイデアいっぱいのがレシピが集まりました。
簡単でおいしい、そしてLEEらしくおしゃれ感もあるメニューです。


料理研究家の藤井恵さんが、
ご飯がもりもり進むデイリーメニュー向けの万能おかずを、
同じく料理研究家の渡辺麻紀さんが、
おもてなしにもOKのおしゃれな雰囲気の洋風メニューを、
代々木「LIFE」オーナーシェフの相場正一郎さんが、
イタリアンな簡単パスタメニューをそれぞれご紹介しています。


豚こまって、こま切れだから
パスタの具材にも便利
今晩のおかずや週末のもてなしメニューに行き詰ったら、
パラッとページをめくれば作りたくなるものが見つかる、
そのぐらいバリエーションが豊富です。
しかも、繰り返しますが豚こまは安いから、
お財布の心配も無し。


最近わが家の夕飯によく登場するのは、
相場さんのフレッシュトマトを使った豚こまのアラビアータ。
ただし、3歳の娘はそのままでは唐辛子の辛さで泣きだしますので、
唐辛子抜きでパスタを作り、
自分の分だけ刻んだ唐辛子をパラリとふりかけます。


このパスタ、あっという間に完成するし、
豚のうまみとトマトのうまみの掛け算で、
確実においしく仕上がります。
ただし、大事な大事な隠し味が1つ。


どこの家庭にもある調味料ですが、
言われなければあまりパスタには使わないもの。
それは…せひ書店でご覧下さい!


毎回料理撮影の際は、
料理を作る皆さんの手元をジーッ見つつ、
手順やコツ、料理のポイントなどを伺います。


でもですね、みなさんとっても手早いです。
本当にパパパパパッツと何品も並行して作っていきます。
スタッフみんなが余談で大いに盛り上がっている間に(もちろん料理研究家の方も)、
ふと気が付くと、あ、もう出来上がる直前まで進んじゃってる!と慌てることもあり。
これは、私がおしゃべり好きなせいでもありますが…。


いろんな方のさまざまな料理を拝見するこの仕事、
いつも新しい発見があります。
シェフや料理研究家は個性の塊みたいな方達。
料理を作ることも食べることも調べることも好きな私には、
いつも刺激的な現場です。

2012/05/08

ああ、英語


夜、娘と食後にのんびりテレビを見ていたら、
ポルトガルの懐かしい友人から
4年ぶりに電話がありました。

「もしもし」
「サヨーリ?」
ポルトガルの人が私の名前を呼ぶときは、
サオリ、ではなくサヨーリになります。)


突然で驚いたけど、でも同時に嬉しい!
話したいことは山ほどあります。
彼との会話はポルトガル語ではなく英語、
ところが、いざ話しだしたらその英語が…


……。


びっくりするぐらい出てきません。
そういえば、最近はメールでのやりとりがほとんど。
英語をしゃべることないからなあ。

子どもの運動会で久しぶりに走ったら、
足がもつれて転んじゃったお父さん、みたいな感じ。
自分のイメージに、記憶していたはずの英語がついてこない。
言葉が出てこないから、空いた右手がブンブン動いてイメージを形作るんだけど、
相手にはもちろん見えないから無意味に空振り。
前につんのめって、転びまくってました。

そういえば、考えたらもう仕事でも3年は英語を使っていない…。

ああ怖い!
英語って、ホントーに、使わないと恐ろしいほど、
どんどん抜けていくものです。

話せなかったことはまあ置いておいて、
おもしろかったのが3歳の娘。
最初は電話のやりとりを遠くからじーっと見ていましたが、
お母さんが電話で英語を話しているのが余程新鮮だったらしく、
しばらくしたら受話器に近づき、それからそばを離れません。

カルロスとの会話が終わると、
「いまの、えいごであそぼ?」と聞いてきました。
自分がNHKの番組で見ている幼児向け英語番組「えいごであそぼ」と一緒だよね、
と確認したんですね。

でもね、正直に言うね、娘よ。
お母さんの今の英語力はですね、
おそらくえいごであそぼより低い。
なんせとっさに単語が出てこないんだから。
えいごであそべません!!

でも、娘はそんなことわかりません。
それよりも何よりも、
テレビや本で見たり聞いたりしている英語ってものが、
自分のお母さんの口から出てきて、
しかも誰かと楽しそうにお話しているということに、
インパクトを受けていたよう。

幼児から英語に親しませるなら、
親も一緒に楽しむのが早いし、
興味を持たせる良いきっかけになるっていうけど、
こりゃ本当ですね。

幼児に英語なんて早すぎるし、続けなきゃすぐ忘れるから無駄だよ、
という声もあります。
そうかもしれません。
どんな方法が良いのか、いくつから始めたら良いのかと
世の中にはいろんな意見があります。
どれが正解かなんてわからないけれど、
本人が興味を持つように、親がちょっと仕掛けたりきっかけを作るのは
決して無駄ではないと思います。

英語は便利な道具です。
これは、自分がいろんな国を旅したり、海外で仕事したりする中で強く感じたし、
確信を持って言えることです。
それから、英語はたどたどしくてもちっとも構わない。
まずは恥ずかしがらずに口に出すことが大事。

ヨーロッパやアジアなどの英語が母国語じゃない国に行くと、
かなりクセのある発音で堂々と話す人が非常に多いことに気がつき、
衝撃を受けます。
どう話すかではなく、何を話すかが大事だから、
発音とか文法とか細かいことは二の次三の次。
通じないのはお前さんの理解力が足りないのだ、
と言われそうな迫力で、彼らは話していたりします
(実際はそんなこと考えていないと思いますが)。

日本人は形や作法を大切にする繊細な民族だから、
実はちゃんと英語を話せる人ですら自分の英語を心配してしまいがちですが、
海外でおかしな英語を堂々と話す人にたくさん会うと、
その生真面目さが段々ばかばかしくなってきます。
いいじゃん、伝われば。
そう思ってくるのです。

と、まるでコンプレックスのない人のような書きぶりですが、
日本で生まれ育った私には、
英語を上手に話せないと恥ずかしいというコンプレックスが
いまだに残っている気がします。

そしてそうなってしまった理由のひとつが、
スタートが遅かったせいだと私は思っています。
人のあれこれが気になり始める中学生からじゃ遅かった。
もっと早く慣れ親しんでおきたかった。
小学校から普通に接していたかった。

中学1年の春、NHKのラジオ基礎英語を聞きながら、
「なんだこの言葉!」と焦った記憶もはっきり残っています。
最初に覚えた単語blackboardの発音を聞いて、
黒板が全然イメージできなかった。
その単語の感覚のあまりの遠さにもショックを受けました。

だから、小さい子ども達には、
早いうちから耳だけでも慣れて欲しい。
その方が、のちのち彼らも楽しいんじゃないかと思います。

英語はやっぱり便利な道具。
ペラペラの必要はないけれど、
思ったことを伝えるのに困らないぐらいになって欲しい。
使い方をマスターすれば、
自分の行きたいところに自由に行ける乗り物みたいなものだから。


それにしても自分の英語、ひどかったなあ。
娘に感づかれる前に、なんとかしなきゃ。

2012/05/07

DOCE ESPIGAのお菓子

卵のケーキ。オリジナルはカバッカ・ミニョータ
という北部ミーニョ地方のお菓子で、
卵の風味が抜群です。
カバッカは南部ではボーロ・デ・ジェマと呼び、
九州各地で見るボーロの原型とも言われています。
手作りの素朴で誠実な味が評判だった
ポルトガル菓子店「DOCE ESPIGA」。
http://ichigaya.keizai.biz/headline/884/


オーナーは高村みゆきさんという
ガッツと好奇心あふれる明るい女性です。


東京のポルトガル料理店で修業後、
自らポルトガルに行って料理修業し、
帰国後に「DOCE ESPIGA」を開店。


製造から販売まですべて一人で行い、
その味の評判を聞き付けて
飲食店関係者もリサーチに来るほどでした。


カボチャのケーキ。ポルトガルではカボチャを
ジャムやケーキによく使います。
これは、生地にカボチャを練り込み
シナモンをきかせたしっとりした口当たりの
高村さんオリジナルレシピのケーキ。
ファンが多かった人気のお菓子の一つです







平日は半蔵門や四ツ谷の街角で、
週末は国連大学前のファーマーズマーケットで
かわいい3輪自転車に菓子を乗せて販売。
約2年間好調に営業していましたが、
4月29日のファーマーズマーケットを最後に、
一度お店を閉めることに。


なんでも、お菓子工房として利用していた一軒家が、
老朽化で取り壊しになるのが決まったからだそうです。

お店で一番人気だった「パステル・デ・ナタ」。
手のひらサイズの卵クリーム入りのタルトで、
日本ではエッグ・タルトの名でよく知られています。
高村さんのナタは皮がパリッと軽く
リスボンのベレンの店のあのナタにかなり近い!






















最終日の29日は朝から高村さんのお菓子ファンが次々と店に足を運び、
高村さんに声を掛け、
午前中には大半のお菓子が売り切れに。
私はお昼前からそばで様子をうかがっていましたが、
高村さんのお菓子ファンの方々は
みなさん一様に、


セリカイア。ふくらみを抑えた、平べったいスフレの
ようなケーキ。しっとりした口当たりと控え目な甘さは
日本人好みの仕上がりに。ポルトガルでは
アメーシャという青梅の甘煮を添えますが、
こちらはプルーンを添えて上品に


「これからどうするの? いつお店を再開するの?」
と気にされていました。
高村さん、
今後しばらくはポルトガルの各地を回って、
新しい味に出合うための旅をするそう。
きっとその旅の中で、
次の展開の構想も練られるのではないかと思います。


高村さんと知り合ったのは、
私の書いた本がきっかけ。


2人を知る日葡協会の方に紹介していただき、
四ツ谷のカフェで初対面。
自己紹介もそこそこに、
ポルトガルの食の話だけで
延々数時間盛り上がりました。


もうすぐポルトガルへ旅立つ高村さん。
たくさんの良い出会いに恵まれますように。
Boa viagem!