この扉の奥の給食室では、熱い女性がフル活動中 |
現地の方のお話しでは、
同じくたこの名産地である兵庫県明石のたこが、
かつて海水の温度異常で
絶滅を危惧されたときに、
天草のたこのを大量に送って放流し、
難を逃れたとか。
明石のたこは天草のたこの子孫!?
そんなたこの名産地で、
もう10年以上たこ料理を研究している
最強たこ料理チーム「ありあけワーキング」のみなさんの作戦本部である台所に
お邪魔させていただきました。
薄曇りの朝9時、
有明地区の元中学校の給食室に
お邪魔すると、
みなさん既にフル回転で仕込み中。
挨拶もそこそこに、
早速たこ料理を教えていただくべく
みなさんの中に紛れ込ませていただきます。
たこはしっかり洗ってぬめりを落とす。 冷たい水の中手際よくやらねばならず、これがひと仕事 |
集まるとのこと、
たこは1キロ強のものが10匹ほど
用意されていました。
たこはとにかく下処理が大切。
塩でぬめりや汚れをしっかり落としてから、
茹でたり加工するわけですが、
10匹のたこを洗うって、
10×8=80本の足と格闘すること。
ぐにゃぐにゃなうえに吸盤がぼこぼこついているたこは、
触ってみると分かりますが、
とてもとても洗いずらい。
洗うなんてもんじゃなく、
しごく、しごく、素早くしごく!
「俺達をちゃんとおいしくしてくれよー」 |
たこ道10年の皆さんの手つきは、
見ているだけでも気持ち良くなるぐらい
本当に鮮やかです。
なんだか自分も洗われているみたい。
しゃっつしゃっつしゃっ、
ざばっざばっざばっ、
グレーっがかっていたたこ達が、
みるみるさっぱりきれいな姿に。
きびきびした連携プレイも
すこぶるかっこいい!
私も早速、
たこの下処理の仕方を
教えていただきました。
生簀の中で楽しそうに遊んでいる
立派な有明たこが相手です。
「ほな、さいならー」 |
ひょいっと掴んで置いた途端、
たこはアイスボックスの隙間を目指して
しゅるしゅると逃げていきます。
「こら待て!」とつかまえて引っ張ると、
吸盤が地面にキューっとくっついて
その力強さにまたびっくり。
まさに生命力の塊ですね、
食べたら御利益ありそうな逞しさ。
氷をドボン! |
急所を突いてとどめを差すそうですが、
その方法は10年選手のみなさんでもなかなか難しいそう。
いつものとおり、
氷で冷やしてしめることにしました。
バケツに生きたたこを入れて、
大きな氷の塊をドボン!
しばらくしてたこの動きが緩慢になってきたら、
頭と足を分け、
塩で全体をもんで汚れを落とします。
見ているだけなら
自分にも簡単にできそうに見えた生きたたこの掃除、
やはり見るとやるとでは大違い。
たこ、楽しいです(観光客気分) |
あまりに華麗過ぎるゆえに
自分も練習したらちょっとはできるんじゃないか、
なんて錯覚する。
ジャンルが違い過ぎて
ピンと来ない例になっちゃいましたが、
とにかくその位、
ぐにゃぐにゃのたこを手にすると、
軟体動物を扱う難しさを実感しました。
生きたたこと格闘しつつなんとか洗ったら、
次は窯で茹でます。
給食室の大釜で10匹茹でます |
たこ10匹茹でるのもラクラクの大きさ。
たっぷりの湯を沸かし、
色止めに酢を少々加えて数分茹でます。
たこを投入するときの持ち方も、
足からゆっくり入れるのがルール。
熱い湯の中で、たこはみるみる赤く染まっていきます。
商品化するという目的で
常にたこを扱っている皆さんは、
茹であがりの色や
皮がむけない(下手だと皮がむけます)など、
ビジュアルにも強いこだわりあり。
食感、見た目ともにベストなタイミングは
時間を計るのではなく、見た目と長年の経験で
判断。
左が圧力鍋、右が茹でたこ |
試しに1匹だけ
圧力鍋で短時間加熱してみたのですが、
色も見た目もゆでだこには負けました。
ポルトガルでは、
家庭では圧力鍋で蒸す人が
多かったんです。
大きな鍋があれば、
茹でる方が見た目は断然いい。
色良く姿良く茹であがったたこをちぎってひと口。 うま味がギューっと詰まっています |
たこを茹で終わったら、
いよいよ私もポルトガル料理の仕込みです。
たこサラダ、たことじゃがいものグリル、
たこごはんの3種を
10人前ずつ作りました。
有明の地元で民宿を経営している
おかみさんのみなさんにも御参加いただき、
一緒に料理。
大先輩の包丁さばきは
とにかく早い、美しい、手際が良い!
百戦錬磨の有明の民宿のみなさまと |
お話を伺うと、
民宿の料理とは別に
毎日家族3世代8人分の料理を作る
という方もいらして、
ただただ頭の下がる思いでした。
毎日朝晩8人分を作るのって大仕事。
都会の個食、小食、小盛りに慣れていると、
大人数の料理って、
大仕事だなあと思います。
料理のポーションが
せいぜい4人分程度が主流の昨今、
私も10人分は久しぶり。
しかも、天草で10人分とは、
たっぷり2倍は作らないと、
もてなしにならないとか。
やや、それってポルトガルと
一緒じゃないですか!
たくさん作るとおいしいよね、という文化は
450年前に伝来した
南蛮文化の名残なのでしょうか?
給食室にあるさまざまな道具を使って、
皆さんにもお手伝いいただいて、
試食会開始15分を切ると大わらわ。
これがまた楽しい時間でした。
たこ、たこ、たこの料理がずらり。 御挨拶もたこのお話! |
天草のたこ料理が
たこめし、
たこみそ、
たこきんぴら、
たこさし、
たこステーキ、
たこ天ぷら、
たこ炒め、
たこ入りのせんだご汁
(せんだごとは、さつま芋をつかった団子。
熊本の各地にあるが、天草のせんだごは
宣教師が伝授したレシピによると言われている)
そして、たこの吸盤の刺身!
これは新鮮なたこが入ったときのごちそうです。
最初から最後まで、 お口の中でコリコリしっぱなし!吸盤の刺身 |
ポルトガルの料理は
たこサラダ、
たことじゃがいものグリル、
たこご飯。
すべてがずらりと並ぶと壮観です。
天草のたこ料理は、
甘めの味つけが特徴でした。
さすがたこのゆで具合がばっちり、
どの料理も、箸が止まりません。
たこてんぷらと、たこめし。 ほんのり甘めの味つけ |
たこステーキ!歯の弱いお年寄りや 幼児でも食べられるやわらかさ |
ポルトガル料理 たことじゃがいものグリル 「ポルヴォ・ア・ラガレイロ」も みなさんに好評でした |
天草・有明のグルメなみなさんと一緒に |
ちなみに、ポルトガル料理で
一番好評をいただいたのは、
たこのサラダ。
香菜とイタリアンパセリをきかせ、
にんにくを隠し味にした食べ方が、
新鮮だったそうです。
それにしてなによりも、
私が一番
楽しく過ごさせていただいた気がします。
本当にありがとうございました!
また、お邪魔させてください。